特番記録

特番を中心に、テレビ番組を記録するブログ

2022年に読んで面白かったミステリー小説

ミステリー小説を読み終わったとき、感想を書いてる人のブログを読み漁るのが好きなので、自分でもやってみようと思う。ただあんまり長い感想とか、トリックや伏線の考察とかはできない。面白い! とかここが好き! とかしか言えない。

今ままであまり本読んでなかったんだけど、今年は夏頃から急に読書にハマって、かなりの数を読んだ。ミステリー小説だけでも(読んでる9割はミステリーだけど)40冊くらい。その中から、自分の中で特に面白かったものをピックアップして、作家別に感想を記録していく。

 

1. 相沢沙呼「medium 霊媒探偵城塚翡翠

2年前、このミスなどのさまざまな大賞を獲りまくった小説。結構前に買ってたけど、ようやく今年読めた。

正直前半...というより割と後半までは、この話にあんま乗れない!w ドラマでは薄れてたけど、主人公はちょいちょい気持ち悪いし、翡翠は男の妄想が詰まったキャラって感じなのでw 推理小説としても、このミスとか本格ミステリ1位と書いてある割には普通というか、そんなに驚く部分が少ない。

でもそれも全て最後まで読み切れば納得。帯に随分と大袈裟なことが書いてあるなと思ってたけど、あんだけ書いてくれてたからこそ最後まで読んでみるかという気持ちになれたので、そういう意味でも大袈裟な触れ込みは大事だと思った。(ネタバレしないように書いたら内容全然触れてない!)

 

2. 青柳碧人「むかしむかしあるところに、死体がありました。」

青柳碧人さんの作品何冊か読んだけど、変わった設定の中で王道ミステリーをやるのが得意な作家さんなのかなと思った。この本の中でも、昔話という誰もが知っている物語の進行中に事件が起きて、ミステリーの王道であるアリバイや密室トリック、ダイイングメッセージなどが、それぞれの事件にうまい具合に組み込まれている。

自分は「花咲か死者伝言」が一番好き。どの話も面白いんだけど、これは特に読後の余韻がすごい。このシリーズの続編は、まだ読んでないので読みたい。

 

3. 浅倉秋成「教室が、ひとりになるまで」「六人の嘘つきな大学生」「俺ではない炎上」

「教室が、ひとりになるまで」は、学園ミステリー×特殊能力設定の本格ミステリー。学内での事件発生をきっかけに、主人公が事件の真相を追っていく王道の流れなんだけど、その主軸になってるのは学生同士の人間関係。単純にいい奴か悪い奴か、それだけじゃない、それぞれの登場人物がこういう考えを持って生きているんだっていうのをしっかり描いているのが素晴らしい。そしてそれがめちゃくちゃ面白い。終盤のシリアス味も、結末も良い。ミステリーとしても、中盤の展開には衝撃を受けたし、(浅倉さんの小説に全部共通してるけど)とにかく伏線回収がすごいので気持ちいい。笑

浅倉さんの作品はどれも自分の好みにブッ刺さって面白かったんだけど、特に好きで衝撃を受けたのは「六人の嘘つきな大学生」。殺人事件を扱わないミステリーでここまで面白い話を創れるの天才だと思う。序盤は、エリート就活生たちがグループディスカッションに向けて絆を深め合っていく様子がテンポよくて読みやすい。その後、突然ミステリー展開になってギャップで一気に引き込まれるのも好き。前後半で分かれていて、そのままの流れで解決までいかないのが初めはもどかしく感じるけど、最後まで読めばそんなのは些細なことだなと感じるくらい面白い。就活を経験したことがある人には特に刺さりまくる小説。

「俺ではない炎上」は、タイトルでなんとなくわかるように、自分とは無関係のはずの事件が、なぜか自分が犯人ということにされて炎上してしまい、男が逃亡する話。犯人の罪を着せられて逃亡する人の話はだいたい面白いと決まってるので(最近見たものでいうと、ドラマ「金田一少年の事件簿」で、金田一少年が殺人の罪を着せられて逃げ回る話が面白かった)、あらすじの時点でワクワクした。ハラハラ感が常にあって読み進める手が止まらないし、読者を騙す仕掛けも見事。SNSの問題を扱っていて、この作品もミステリー以外の部分についても考えさせられた。

 

4. 乙一「銃とチョコレート」「さよならに反する現象」

登場人物の名前が全てチョコレートの名前、怪盗と探偵の対決が世間を賑わせているなど、現代日本でもなく現実味もない世界の話なので、慣れるまではちょっと時間がかかる。自分は全4章あるうち前半2章までは、登場人物があまり好きになれなくて、物語にもそんなに乗れてなかった。けど2章の最後の最後に意外な展開になって、そこからめちゃくちゃ面白くなっていった。登場人物についても、基本いい奴は出てこなくて、それでも完全に嫌な奴には思えないのでその辺が徐々に面白くなってくる。塩梅がうまい。

冒険ものとしてもワクワクとハラハラが詰まった展開の連続で、ミステリー要素もふんだんに盛り込まれた冒険×ミステリーの傑作!

笑いあり、涙あり、ホラーありと、それぞれ違う方向性の短編5つが収録されていて、自分が乙一ファンである所以が詰まったような小説だった。特に「家政婦」と「悠川さんは写りたい」が好き。「なごみ探偵おそ松」は、普通のミステリー小説では信じられないような展開が見れるので、色んなミステリー好きに見てみてほしいw

 

5. 西澤保彦「彼女が死んだ夜」

西澤保彦さんの作品は特殊設定系のミステリーしか読んだことなかったので、特殊設定なし直球ミステリーもこんなにも面白いのかと衝撃を受けた。現実離れした設定にするでもなく、ありえないキャラを出すでもなく、一つの謎から始まった事件をどんどん膨らませていった結果、次々と予想できない展開になってめちゃくちゃ面白かった。本格ミステリーとしての誠実さを感じる。

個性的で愛着の湧く登場人物たちなので、シリーズ化されているのも納得。他のシリーズ作品もこれから読んでいきたいと思う。

 

6. まさきとしか「あの日、君は何をした」

自分は上の「彼女が死んだ夜」みたいなコミカルな雰囲気のミステリーの方が好きなので、がっつりシリアスなこの作品は雰囲気的には好みじゃなかったけど、超絶面白かったので、マジで読んでよかったと思った。ストーリーの作り込みが半端じゃない。これぞミステリーって感じの、全てが繋がっていく感覚と真相に対する衝撃を味わえるので、ミステリー好きはぜひ読むべき一冊だと思う。

そして人間同士の関係性や心理描写がとんでもなくうまい。登場人物が何を考えて、どんな会話をして、どうしてそうなっていくのか、そういう細かい部分まで丁寧で、どの人も実際にはいなくても「いそう」と思えた。

 

7. 麻耶雄高「さよなら神様」

神様ゲーム」の続編で、6つの連作短編集。毎話、全てを知っている"神様"こと鈴木太郎が、「犯人は〇〇だよ」と宣言するところから始まる。それだけでもう面白いよね。その犯人の名前を聞いた主人公(鈴木は主人公ではない)が、本当に犯人なのかどうかを確かめるために事件を調べていくというストーリー。特に面白いのは、鈴木が"神様"であることはこの物語の中では何よりも揺るぎない事実なので、鈴木が言った人物は100%犯人というところ。犯人だけは確実にわかってる状態で真相を探っていくという、ミステリーでは見たことのない構成だけど、特に後半の3作は確実に想像を超えてくる。

 

8. 森博嗣すべてがFになる

色んなところで名前を聞くので、これは読まねばと思い読んだ。

島とか建物とか殺され方とか、設定からミステリー要素満載。だから若干読みにくかったけど、トリックがすごすぎたので大満足。なんとなくかっこいい・聞いたことない・語感がいい・読んだ後に意味がわかるなど、良いタイトルの要素に限りなく当てはまったタイトルなので、それも含めて好き。

 

9. 米澤穂信インシテミル

米澤穂信さんの作品は何冊かしか読んだことなくて、学園もののライトミステリーか、ホラー要素含んだ重ための作品が多いイメージだったので、デスゲームのような世界観でエンタメ性の高いこの「インシテミル」はかなり意外だった。

こういう設定が重要な作品は本格的にストーリーが進んでいくまでに時間がかかるのが難点だと思うんだけど、でもやっぱ本格的に始まったら面白過ぎて読む手が止まらないし、登場人物も多いのに余裕でみんな覚えられる。それももちろん米澤さんの力量なんだけど。ただのデスゲームで終わらず、後半しっかりとミステリーとしての盛り上がりがあるので、どっちも楽しめる最高の一冊。