特番記録

特番を中心に、テレビ番組を記録するブログ

2023年に読んで面白かったミステリー小説

2022年に1年間の内に読んで面白かったミステリー小説をまとめた記事を書いていて(↓昨年の記事)、

morikawa2.hatenablog.com

 

2023年も記事にまとめられるくらいには小説を読んだので、感想を記録しておこうと思う。

記録アプリで数えてみたら、2023年は33冊読んでた。内、ミステリーは28冊だったのでほとんどだ。特に面白かったものを作者別に10名選んで記録していく。

 

1. ホリー・ジャクソン「自由研究には向かない殺人」

海外ミステリーはほとんど読んだことがなかったけど、いざ読んでみたらめちゃくちゃ本格的な謎解きをしていた。高校生の主人公が、自由研究の名目で、ある事件の捜査を始めて、関係者へのインタビューとかをやりながら少しずつ手がかりを集めていくというストーリー。この小説の何が良いって、タイトルにある通り"自由研究"で事件を調査するってところ! この発想は今までなかったなあ。それに、やっぱり学生が探偵役のミステリーはそれだけでわくわくするし、この主人公は事件の真相を追う目的が、好奇心とか、犯人と思われている人物の疑いを晴らしたいとか、どれも真っ直ぐで純粋でそこが良かった。

 

2. 夕木春央「方舟」

2022年後期にミステリー界で話題になっていて、あらすじを聞いたら絶対面白いやつやんと思い手に取った作品。たまたま地下建築に閉じ込められてしまった主人公たち、助かるには誰か1人が犠牲にならなければならないという究極の選択を迫られる。そんな極限状況で、仲間の1人が殺される不可解な事件が発生する。誰がなぜ殺したのか? 1人を犠牲にしなければいけないのなら、その犯人をを選ぶべきでは? 過酷で残酷な状況の中、犯人探しが始まる……。

な!あらすじ面白すぎる!追い込み過ぎ追い込み過ぎ!w ミステリーでもこんな過酷な状況なかなか見ないし、"何で"こんな状況で殺人が起きるの?という最大の疑問が最後までずっと持続するのが良かった。そして最後の最後のアレはもう興奮と絶望!作者気持っちいいだろうなー!w

 

十戒

もうこれはタイトルと表紙買いだよね。「方舟」読んだ人をホイホイ釣ったろうっていうデザインじゃん。まあ私含むミステリーオタクたちは、逆にこんなわかりやすく釣ってくれてありがとうございます!っつって、ヨダレ垂らして買うんだけど。

で、また聞いたことないような過酷な状況を作り出した夕木プロ。「殺人犯を見つけてはならない」犯人から課せられたこの戒律を守らなければ、島内の爆弾が爆発して全員が死ぬ。ヤバこわっ!ww 犯人の意思次第で次の瞬間吹き飛ぶかもしれない状況なので、作中に漂う恐ろしさと緊張感でいったら「方舟」より上かも。あと、こんな戒律が課せられているからこそ、「深く考えないようにしよう」とか「できるだけ手がかりは見つけないようにしよう」とか、普通だったらあり得ない配慮が真面目に行われるのが面白い。「方舟」にやられた人なら読むべき一冊。

 

3. 北山猛邦「私たちが星座を盗んだ理由」

恋愛やファンタジーなどバラエティ豊かな5作からなる短編集で、どれも終盤に明かされるミステリー要素がある。

「終の童話」という作品が特に最高でめちゃくちゃ好きだった。ファンタジー世界の話なんだけど、設定も展開もスルスル入ってきて、普段からファンタジー書いている人なのかな? って思うくらい(北山猛邦さん初めて読んだ)のめり込んで読んでた。ストーリーは切なさが見どころで、終盤で出てくるミステリー要素がさらに物語を盛り上げる重要ポイントになっていて良かった。

 

4. 青崎有吾「11文字の檻」

JKの日常を描いたものや、ショートショートミステリー、SFなど、色んな作品があってどれもクオリティ高くて、特に「恋澤姉妹」というアクション×百合作品は世界観が面白かった。

そしてもう何といっても表題作「11文字の檻」が面白すぎた! 短編だし、もうこれだけ読んでって言って色んな人に読ませて回ったろうかなってくらい面白かった。主人公もストーリー構成も敵(?)サイドのキャラも全部が最高に自分の好みで、逆に書きたいことがないくらい本当に好きだった。

 

「体育館の殺人」

自分は青崎有吾作品は「11文字の檻」が初で、前述の通り刺さりまくったので、長編も気になってこっちも読んでみた。ザ・王道学園ミステリーな設定に加え、推理部分にがっつりページを割いてあって、ミステリー好きを喜ばせてくれるありがたい構成になっている。

そしてこの作品の一つの特徴だなと思ったのは、容疑者が十数人とかなり多いこと。だから、主人公の推理を聞きながら、自分の頭の中でも「こいつは当てはまる、こいつは違う」と絞っていけるのが、一緒に謎解きしている感覚を味わえてワクワクした(私は読みながら自分なりの推理とかは全くしません、できません)。あと、ミステリーでよくある凝った舞台設定とかがなく、どこにでもある普通の学校の体育館で事件が起こるのも良い。入り込みやすい上に、見覚えのある光景のちょっとした違和感から推理が始まる感じに非日常感を味わえる。

 

5. 歌野晶午「絶望ノート」

まずすごいのは、600ページを1日で読み切ってしまったこと。私がではなく、歌野晶午の筆力がすごい。いじめの話なので基本読んでいてきついから、この話を読んでこう表現するのはちょっと合ってないだろうけど、コミカルで思わずクスッとなる文章なんだよな。文章にユーモアがある感じ。だからきつくてもぐんぐん読めてしまう。それに序盤はずっときついけど、あらすじでいじめの主犯が死ぬことは明記されているので、それを"救い"と思って読み進めれば、そこから先は、なぜ死んだ? 誰が殺した? 2人目の死者!? とミステリー展開が加速して面白さが増すだけなので、読む手が止まらなくなるはず。

 

6. 浅倉秋成「フラッガーの方程式」

面白かったから選んだけど、よく考えたらミステリーではなかった。ジャンルは、何でもありのドタバタラブコメ(伏線回収付き)って感じの作品。

最後まで読んだらめちゃくちゃ面白かったけど、正直私は、終盤になるまでは面白いとは思えなかった。なぜならストーリーが"よくわからない"から。だからamazonのレビューで、途中で辞めてしまった人と最後まで読んだ人で評価が分かれてるのが共感できて笑ってしまったw 5分の3を超えたあたりから、それまでのストーリーと少し毛色が変わってその後ギアが数段階上がるので、そこの興奮と気持ちよさで前半のお釣りがくると私は感じた。

 

7. 貴志祐介「クリムゾンの迷宮」

よく考えたらこれもミステリーではなかった! デスゲームが読みたいぞって人がいた場合、ミステリー要素が欲しい人には「インシテミル」を薦めて、サバイバルとか殺し合い要素が欲しい人にはこれを薦めようと思う。

一番面白かったところは、デスゲームの参加者である主人公たちが、自分の選んだ選択肢によって運命が左右されるところが、ガチのデス"ゲーム"って感じがしてゾクゾクした。思わず読んでる側も自分ならどれ選ぼう〜って悩んじゃうような、ゲームとして良質な選択肢で、そこが醍醐味。めちゃくちゃ一気読み向き!

 

8. 乾くるみ「リピート」

主人公のことが全く好きになれなかったけど、タイムリープ系ミステリーが好きなら抑えとくべき一冊だと思う。普通のミステリーとは全然違うタイプのめちゃくちゃ「なるほど〜!」となる真相だった。主人公のことは本当に嫌いだったけどw

 

9. 中山七里「笑え、シャイロック

銀行の仕事である金貸しの「回収」を担う渉外部というところのお話。危険なことも多いが、世の中のお金をきちんと循環させるためにはなくてはならない仕事で、それをいかにして成功させるか頭を使って遂行する主人公がかっこよかった。ミステリー要素よりもお仕事小説の雰囲気の方が強いけど、ミステリー至上主義の私でも楽しめた。

 

10. 乙一「沈みかけの船より、愛をこめて」

ジャンルは様々で雑多な短編集。しっかりミステリー要素があるのは、最後の作品くらい。

「蟹喰丸」が変な設定で面白かった(本書の作品は全部変っちゃ変だけど)のと、特に終盤3作が好きだった。「地球に磔にされた男」は、タイムリープもので今までに読んだことない設定を作り出して、そこからの展開も読めない点が面白かった。表題作「沈みかけの船より、愛をこめて」はまずタイトルが美しいことと、親が離婚する状況を一番俯瞰的に見るというスタイルが画期的で良い。「二つの顔と表面」は、純粋な謎解きと、ファンタジー要素、宗教、友情…という複数の要素がうまく合わさっていてとても良かった。